「こころ」四方山   副支部長 小川 淑雄

 

  昨年の4月に兵庫支部の副支部長を拝命いたしました。約1年半が過ぎてしまいました。少々、遅きに失した感がいたしますが、今後ともご指導・ご鞭撻よろしくお願い申し上げます。大したお役にも立てず、ただ時が過ぎてしまったように思います。その間、安全研修会、リスクアセスメント担当者研修会、リスクアセスメント診断事業等々を通じて、私なりにいろいろ勉強させていただきました。ありがとうございました。

 

  本部機関誌「2008 VOL.28 86」の「支部コーナー」に投稿させていただき、その中で少し触れさせていただきましたが、昨今の社会はあらゆる分野で、荒みきった様相を呈しております。安全・安心の社会などどこの世界の話かと思わせるような事件や事故、災害が発生しております。しかも、それが地球規模の問題にまで発展している事案もございます。詳細は割愛させていただきますが、労働安全の分野でも同じような現象が起きております。

 

  先日ある機会があり、茶道裏千家十六代 千宗室氏著 「自分を生きてみる」・・・一期一会の心得 に接する機会がありました。その中に第三代宗旦氏の教えのことについてふれられていたのでご紹介したいと思います。

「茶の湯とは 心に伝え 眼に伝え 耳に伝えて一筆もなし」
   千宗室氏曰く 「茶の湯とは」の部分を他の言葉に置き換えてみたらいかがでしょう

  何かを得ようと思ったら、それに向かって自分が近寄っていき、自分の目で見て
自分の耳で聞き、自分の心に感じなければだめ、そうしてこそ、はじめて生きた知識として身につき、
知恵へと変わっていくのだと思います。・・・


著者の伝えたいことと、わたくしの解釈が少々ズレているかもしれませんが、私は、「安全は・・・」に置き換え、そして、「に」でも「で」でも感ずる人によってどちらでもいいんじゃないかと思っております。

 

「安全は 心に(で)伝え 眼に(で)伝え 耳に(で)伝えて一筆もなし」

 

  もちろん、ここでいう「安全」は、「衛生」も含めた広い意味で使わせていただいていますが・・・

 

  百聞は一見に如かず、眼は口ほどにものを言い、眼は心の窓・・・このような言葉があります。まさに、先人の素晴らしい教えです。

  安全衛生活動は、「全員参加」」、「先取り」、「ゼロ」が目標です、そしてその根本に流れるものは「人間尊重の理念=心」であることは、安全衛生に携わる者は自明の理です。

 

  技術的手法を伝えるのは、簡単かもしれません、しかし、一番大切な「理念=心」を伝えるためには、伝える側に「理念=心」がないと、結局「カラ念仏」となって、その場限りの研修会などになってしまい、会場を出るとすぐ忘れ去られてしまうようなことになってしまうのではないでしょうか。

 

  ほとんどの研修会や講習、はたまた教育の分野でも、結局この「理念=心」が伝わらないままでおしまいになっているのが現状ではないでしょうか。

 

確かに、確認のしようがありません。しかし、伝える側がこのことを常に意識しながらやり続けることにより、いくらかでも社会を変え、貢献していけるのではないかと思っております。

 

安全衛生活動は、本当に携われば携わるほど難しい分野です。発生した労働災害は、明らかに数字で表れますが、活動の成果として、企業に対しどれだけの貢献したか、救われた命の数はどれほどだったか・・・など知ることはできません。

とどのつまり、企業としてのエシックス(Ethics倫理)の問題に行きつくところだと思います。

 

  まだまだ経験浅く、微力な私ではございますが、このような気概をモットーとして、今後の活動をしていこうと思っております。残り少ない人生で、どこまで前進できるか分かりませんが、焦らず、弛まず、着実を心に、まい進したいと思っております。

 

        「門前の小僧 習わぬ経を読む」と言われないように・・・